「がんばりやのエドワード」について解説してみた
さて、ニコニコ大百科やtwitterでのわたしをご存じの方なら多分ご承知だろうが、私は「きかんしゃトーマス」という模型作品が大好きだ。とくにエドワードという機関車ものすごく大好きでこんな記事をニコニコ大百科に立てるほど好きだ。本当に好きだ。
さて、きかんしゃトーマス第49話「がんばりやのエドワード」は、そのエドワードが故障をおして活躍する話だ。エドワード大活躍で私はもうこの話を見るたびに何の比喩でもなく涙を流す。もう本当に大好きな話なのだ。
この話はプロットも話の流れも考証もどれをとってもお気に入りだが、ちょっと詳しくないとわからない。まず、エドワードがクランクピンを折ってしまったというが、「クランクピンって何よ!!」っていう人も多いと思うのだ。
クランクピンとはここだ
別の角度からみてみると
この車輪と連結棒(カップリングロッド)を繋いでいる出っ張りが蒸気機関車の車輪のクランクピンだ(よく誤解されるが、連結棒を折ったわけではない)。クランクピンがなければ、主連棒から伝わる動きが車輪に伝わらず、大変なことになってしまう。つまりは、大変なことになってしまう。
まあ、つまりは大変なことなのだ。人間で言えばアキレス腱が切れたようなものだろう。
ちなみに、原作では「クランクピンが折れた」などという生易しいものではなく、
( ゚д゚)ポカーン
クランクピンが折れて、尚且つロッドがランボード目掛けて貫通しめちゃめちゃにしており、機関室(キャブ)の側面まで破壊している。正直いってかなり絶望的な状況だが、エドワードと乗務員は諦めない。
乗務員はエドワードの連結棒を取り外す。
「クランクピンが折れたんだよ。エドワード。だから、ピストン棒を外したよ。昔の機関車みたいな片側ピストンになっちまったんだが」
と機関士は言う(ピストン棒を外したらもっと大変なことになる! だから「ピストン棒」というのは誤訳臭い)。原作の原文では、
"We've taken your side-rods off. Now you're a 'single' like an old fashioned engine(後略)
THE RAILWAY SERIES NO.21 Main Line Enginesより
となっている。「single」が強調されてるから、「old fasioned engine(昔風の機関車)」はシングルドライバーのことなのかなあと思う。シングルドライバーとは、1800年代後半、急行列車用に多く作られた動輪1軸の機関車のこと。きかんしゃトーマスでいうと、エミリーがシングルドライバーの機関車だ。まあ、これ(グーグル画像検索)を見たほうが理解は早い。
ともかく、クランクピンが折れてしまったので、連結棒は役に立たない。つまり、エドワードはピストンによって動く動輪だけで動かなければならなくなった。図にするとこんな感じ。
うん。結構やばい状態なのがお分かりいただけただろうか。おまけに雨が降っていて滑りやすく、エドワードは動き出そうとしてもスリップしてしまう。
そこで機関士と助手と車掌はエドワードの客車の連結を緩めた。これはどういうことかというと、「貨車を牽く時みたいに一台ずつ引っ張り出せる」とエドワードの機関士は言うけど、旅客列車の連結は固く締めてあるものなのだ。なぜならば、そのほうが揺れが少なくてお客さんは快適だから。逆に、貨物列車は緩く締めてあることが多い。これは、揺れは大きくなるけども、長い貨物列車の貨車を1台ずつ引き出せるからだ。図で説明すると、
ということだ。エドワードは1両ずつ客車を引っ張る。まさに
1台目の客車の動きが、2台目の客車。3台目の客車と少しずつ、伝わった。
森本レオのナレーションより
のようにだ。かくして重たい客車は動き出す! 嬉しそうなエドワード! そして機関士のうれしそうな声! まさに乗務員とエドワードの知恵と技術の大勝利なのだ!
ところで、流石にお客さんからは苦情が出そうだが、意外や意外。お客さんはみんなエドワードを応援していた。何故ならばこの観光客の集団は鉄道オタファンだからだ。駅につくと怒っているトップハム・ハット卿そっちのけでエドワードと乗務員にありがとうという。
多分、鉄道ファンたちは「凄いものを見せてもらってありがとう!」みたいな気持ちだったんだと思う。乗客が鉄道ファンじゃなかった時のことを考えると怖い
そして、私が一番好きなところ。
冒頭にエドワードに哀れな目線を浴びせかけていたゴードンたちが改心するのだ。自分の力を言葉ではなく行動で示したエドワードは、私にとっては本当に愛おしいのだ!ゴードンたちは黙ってはいたが、エドワードは本当にえらいと思っていた。
森本レオのナレーションより